1,000台以上の法人向けPCのオーダー(注文)から納品されるまで(前編)


PCオーダー

実際に1,000台以上のお客様のPCが、保管されている倉庫に何度も足を運んで、実際に見たことがあります。

レノボに入った当初、私はどちらかといえば、ソフトウェア畑で、サーバに触れる機会があっても遠隔地から操作したり、ハードウェア(IT機器)の営業に関わっていませんでした。なので、大規模な案件があって、お客様やビジネスパートナー(レノボのPCを商材として取り扱う販売会社)と打ち合わせしてても、大量のPCの存在をイメージできず、知ったかぶりをして深みのない話をしていたように思います。

でも、実際に見てからは、あらためて自分はPCメーカーの一員だという意識が高まりましたね。

では、1,000台以上のPCのオーダー(注文)が入る前後から、納品されるまでに、どんなことが起きているのか、を実体験もふまえながら説明していきますね。

民間企業と公的機関のスケジュール

PCの売買にあたり、入札のない、民間企業と、入札のある、公的機関とで、大きく2種類のお客様タイプがあり、その2つの違いは、まずスケジュールの部分が異なります。

カレンダー

webandi / Pixabay

(民間企業のスケジュール)

PCの選定時期、本番稼働開始(エンドユーザー・利用者のもとでPCの利用開始)が、だいたいざっくりとした予定になっています。例えば、9月か10月の秋ごろ、年度明けの4月から、など。利用者が明確に、例えば、新入社員向けと決まっている場合、あるいはPCがリースで、リース切れの日が確定している場合、きっちりとした日付が決まっていますが、基本的には、予定がぶれると考えていた方がいいですね。

民間企業ですから、業績や、予算案、会社の方針などに左右され、導入予定だったPCを買わずに、既存のPCをそのまま使う、リースを延長する、といったことが起きます。

(公的機関のスケジュール)

スケジュールが、一度確定すると、基本的にぶれません。確定すると言っているのは、その組織、関連組織のホームページで、要求仕様書(どういうスペックのPCを何台必要か、いつ納品して、いつから利用開始、というのが書かれています)というのが公示(公開)されるタイミングです。実際のところ、公示される1周間や数週間前に、ある程度、スケジュールが分かります。

公的機関の場合、予算がきっちり決まっていて、その予算を使い切る期限というのがあります。したがって、使い切れないと、その責任者はおそらくマイナス評価の対象になったり、なんでしょうか。確か公務員の方は減点方式ですよね。あと、次年度予算が減るでしょうね。余ってしまえば。だから、スケジュールが明確なのでしょう。

オーダー(注文)が入るまでの動きは?

PCの選定時期までに、提案しているPCを貸し出し、検証してもらったり、何度か、提案書を持参して、プレゼンをします。

(民間企業の場合)一次選考、最終選考などとフェーズがあり、候補のPCが絞られます。
(公的機関の場合)入札なので、一発勝負で、PCが選定されます。

最終選考の候補に残ることがほぼ確定すると(入札なら、落札できる可能性が高まれば)、1,000台以上の大規模案件だと、PCを製造するにも、大量のCPUやメモリー、それ以外のパーツも、ある一定期間に、一気に必要になるわけで、パーツを提供しているサプライヤーに、調達の調整をします。そういった調整役を専門とする、 グローバル・サプライ・チェーン(Global Supply Chain: GSC)専任の担当者もいるぐらいですからね。

つまり、オーダーが入るPCのタイプ、スペック、台数等、予測を立てます。

プリセールスSEとしても、貸し出したPCの検証支援や、技術情報の提供、必要な資料を用意したり、と様々なタスクがふってきます。

営業の数字が、売上予測として立てられ、毎日のように、担当営業と直属上長の間、またその上司や関係者も含めて、状況の確認がなされ、案件規模が大きければ大きいほど、緊迫した状態になるんですね。大規模案件は、売上目標の達成に大きく影響しますから。

このあたりが、法人営業で、大規模案件を担当する人たちの面白さの醍醐味かもしれません。選定時期の直前は特に大変だし、プレッシャーは当然かかるのですが、案件獲得できたときの嬉しさ、気持ちよさが、仕事を続けるモチベーションになっています。

さあ、いよいよ最終選考で残った候補の最終選定です(公的機関ならば、開札です。開札で落札業者が分かります)。

選択

Hans / Pixabay

民間企業の場合ですが、実はこの前段階で、ほぼオーダーが入ることが確実ならば、先行オーダーといって、工場に製造の指示を出すケースもあります。万が一、オーダーされない自体になれば、大きな損失ですが、そこは、納期までのスケジュールの兼ね合いもあり、リスクを取るわけです。

どんなふうにオーダーがきて、その後は?

PCが選定されると、オーダーが入ります。レノボの法人営業の場合、ビジネスモデル上、お客様と直接取引する売買契約はほとんどないので、お客様とレノボの間に、販売パートナーが入っていて、その販売パートナーから、レノボにオーダーが入るのですね。

ちょっとここで営業の体制を説明しますと、コンピューターメーカーでは、1つのお客様を担当する、営業が2名います。

  • 外勤営業:
    外回りを中心に活動する営業(大規模案件がメインの営業活動)
  • 内勤営業:
    基本は外回りせず、オフィス内で、電話のみで営業(大規模案件も外勤営業と一緒に対応するが、数台、数十台規模の案件を主に担当する

だいたいのケースで、販売パートナーからオーダーが入ったあとの処理は、内勤営業が行いますが、外勤営業が行うときもあります。システム上で、インプットの処理をするので、外勤営業が操作に慣れているか否か、や他の案件活動で予定が詰まっていたりで、運用が異なります。

次回へ続く・・・

後編はこちらです。

1,000台以上の法人向けPCのオーダーを入れた(処理した)あとのこと、納品までのお話をお届けしますね。後編です。
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ソニーの情報システム子会社で、5万人以上のユーザー向けの社内ヘルプデスクや、認証サーバ・メールサーバの運用を経験。その後、日本マイクロソフトや、レノボ・ジャパンで、大手法人営業のプリセールスSE を担い、ソフトウェアからハードウェアまで幅広い知識と経験を持つ。現在はIT企業、株式会社ワークスピーディーの代表取締役。 詳しくはこちら → プロフィール